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仙台高等裁判所 平成12年(ネ)384号 判決 2000年12月26日

控訴人 A野太郎

右訴訟代理人弁護士 石澤茂夫

被控訴人 七海喜

右訴訟代理人弁護士 本田哲夫

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一控訴の趣旨

一  原判決を取り消す。

二  被控訴人は、控訴人に対し、三〇〇〇万円及びこれに対する平成一一年三月一三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

四  仮執行の宣言

第二事案の概要等

事案の概要、争いのない事実等及び当事者双方の主張・争点は、次のとおり補正するほか、原判決の「事実及び理由」第二に記載のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決別紙登記目録一1記載の条件付所有権移転仮登記の受付番号の箇所(「第三九九一号」)を次のとおり改める。「(原判決別紙物件目録八及び一三記載の土地については第三九八八号、同四、七及び一一記載の土地については第三九八九号、同六、一〇、一二及び一四記載の土地については第三九九〇号、同一ないし三記載の土地については第三九九一号、同九記載の土地については第三九九二号、同五記載の土地については第三九九三号)」

2  原判決三頁二行目の「第三九九一号」を「第三九八八ないし三九九三号」と改め、同七行目の「一三」の次に「、一五ないし二六」を加える。

第三判断

一  当裁判所も、当審において提出された資料を含む本件全資料を検討した結果、控訴人の請求は理由がないので、これを棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり付加するほか、原判決の理由説示(「事実及び理由」第三。ただし、原判決一六頁七行目まで)と同一であるから、これを引用する。

(理由説示の付加)

原判決一六頁四行目の末尾に改行の上、次のとおり加える。

「更に付言すると、前記のとおり(原判決第二の一5)、本件土地の競売手続において、執行裁判所は控訴人らを最優先の仮登記担保権者と認めて配当表を作成したところ、根抵当権者であるB山商事が配当異議訴訟を提起し、右訴訟において、本件仮登記は担保仮登記と認められないので控訴人らの請求債権はB山商事の請求債権に劣後するとして控訴人らが敗訴した。控訴人らは右訴訟において、本件仮登記を担保仮登記と解すべき理由として、C川商事は地権者らに支払った売買代金の返還請求権を担保するため地権者らと仮登記担保契約を締結し本件仮登記がされた旨主張したが、裁判所は、本件仮登記は典型的な条件付所有権移転の仮登記(不動産登記法二条二項)であって、C川商事と地権者らとの間に控訴人ら主張のような仮登記担保権を設定するとの合意が存在したことをうかがわせる事情は認められない旨判断し、右主張は排斥された(《証拠省略》)。すなわち、本件において、本件仮登記が担保仮登記であることをうかがわせるような事情は認められないのであって、本件全証拠によっても、被控訴人が本件仮登記を担保仮登記と誤解し、控訴人に対してその旨の誤った説明をしたものとは認められない。被控訴人が、本件仮登記の控訴人への移転の目的がC川商事に対する貸金の担保のためであることを認識していたこと、本件仮登記がB山商事らの根抵当権に優先する旨説明したことは前記認定のとおりであるが、本件仮登記が右根抵当権より先順位であるという意味において右説明に何ら誤りはなく、右説明が本件仮登記の担保としての効力を念頭においてされたとしても、前記説示のとおり、本件仮登記はB山商事らの根抵当権よりも担保力が上であるということができるから、誤りではない。ただし、前記のとおり本件仮登記は担保権の登記ではないから、その担保的効力は事実上のものであって、例えば本件仮登記に基づく本登記がされた場合には、後順位で登記された根抵当権の実行を妨げることができる等のことを意味するものである。控訴人は本件仮登記を担保仮登記と解したため本件仮登記を有効に活用することができなかったが、右のような結果は控訴人が甘受すべきことであるというほかない。」

二  よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないので棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 大内俊身 裁判官 吉田徹 比佐和枝)

<以下省略>

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